あしたのジョーの魅力に迫るレビュー

不良少年ジョーがボクシングを通じて成長し、様々なライバルとの戦いを繰り広げる『あしたのジョー』。本記事では、その魅力を徹底解説!感動のストーリーや個性的なキャラクター、描写力に迫る。ボクシングに興味のある方は必見!

あらすじ

「あしたのために」のハガキを受け取った少年・ジョーは、元ボクサーの段平による左ジャブの打ち方から始まるボクシング技術の講義に従って練習を始め、パンチの切れが向上する。しかし、犯罪に手を染め逮捕されたジョーは少年院に送られ、力石との宿命の対戦を果たすが敗れ、力石の減量のための無理がたたって死亡する。ジョーはそれでもボクシングを捨てず、苦悩の末に復帰して世界チャンピオン・ホセとの闘いに挑むが、パンチドランカーに冒され敗北する。試合後、満足げな微笑みを浮かべるジョーはグローブを葉子に手渡した。

あしたのジョーの登場人物

矢吹 丈(やぶき じょう)
ジョーは、不遇な生い立ちから来る粗野でケンカっ早く素直では無い性格を持つ不良少年です。彼は、施設で育ち、退屈な暮らしに嫌気がさして脱走を繰り返し、やがて物語の舞台であるドヤ街にフラリと現れました。そこで、ジョーは天性の拳闘の才能を持っていることが発覚し、プロボクサーの道を勧められますが、彼は乗り気ではありませんでした。そのため、相変わらずの非行を続け、ドヤ街で詐欺行為を行い逮捕、特等少年院に送られた後も度々問題行為を起こすことになりました。

しかし、ある日、ジョーはプロボクサーであり、後に宿命のライバルとなる力石徹に打ちのめされます。初めて喧嘩で叩きのめされたジョーは、「打倒力石」という目標を持つようになり、ドヤ街で出会った段平指導の下、ボクシングを始めることになりました。そして、ジョーは段平と共にプロボクサーとしての道を歩み、多くのライバル達と拳を交えていきます。

ジョーの戦闘スタイルは、ノーガードで相手の攻撃を誘い、クロスカウンターで一撃必殺するものです。並外れた強打と不屈の闘志で何度でも立ち上がる驚異的な打たれ強さに加え、天性の勘、野性の本能を持ち、クロスカウンターにさらにカウンターを合わせるダブルクロス、さらにそこにカウンターを合わせるトリプルクロスを使うなど、技術力も高いです。ジョーはガードの技術も向上し、ボクシングセンスもずば抜けています。彼は、元々、ボクシングに詳しくなく、刑務所での拳闘も特殊なルールばかりであったことから、ボクシングの常識やルールを全く理解していなかったとされています。しかし、彼は反則にならない奇策を編み出し、ハリマオに一矢むくいたり、ホセ戦ではダメージで自分は片目が見えなかったが、ケガの功名で、自分でもどこに飛ぶか分からないパンチで、完璧な隙の無さをみせるホセにパンチを当て、さらには小技を使って自分は打たれ強いとアピールをしていたホセの心理トリックを見破り、実際には打たれ弱いのを見抜くなど、頭脳的な面もみせるようになりました。

ジョーは、ボクシングキャリアの中で、東洋太平洋チャンピオン(2度防衛)、WBC世界ランキング4位(アニメではWBA・WBCの1位のレオン・スマイリーにも勝利している)など、数々の実績を残しました。ジョーは、不遇な生い立ちから来る荒々しい性格を持つ不良少年でしたが、ボクシングを通じて人間的にも成長を遂げ、義理堅く弱者に優しい人柄も持っています。ただし、彼の心の中には野獣のような荒々しい、恐ろしい一面が住んでいるため、丈と付き合いの長い人でも、その野獣の一面を感じて離れていってしまう悲劇も経験しています。

丹下 段平(たんげ だんぺい)
「丹下拳闘クラブ」の会長である丹下段平は、かつて強豪プロボクサーだったが、怪我で引退し、ジムを解散して荒んだ生活を送っていた。ある日、天性のパンチ力を持つ少年ジョーに出会い、彼を一流のボクサーに育てることを決意。自分に厳しく、少年院に連れ去られたジョーに手紙で指導し、実地指導も行うが、未熟なセコンドとしても見られる。泪橋の下にある小屋で3人で暮らしていたが、ジョーがチャンピオンになった後、新たなジムを建設して移転した。

マンモス西
西寛一はジョーの最初で最大の友人であり、少年院鑑別所で部屋のボスとして君臨していた。ジョーと共に丹下拳闘クラブに入門し、真面目な好青年に成長し、林食料品店で働き始めた。商才を見せ、後に林屋の店主の娘と結婚。原作ではボクシングを諦めたが、アニメ版では最後までジョーをサポートしている。

白木 葉子(しらき ようこ)
白木財閥の令嬢であるヒロインは気丈でプライドが高く、力石とは親密な関係にあった。初めはジョーを嫌悪していたが、再びボクシングへの情熱を取り戻したジョーの成長にサポートをおこない、ホセ・メンドーサとの一戦前には自らの想いを伝えた。試合中にはジョーを激励し、試合後にはジョーからグローブを手渡された。

ジョーのライバルたち

力石 徹(りきいし とおる)
ジョーの最大のライバルで、特等少年院での対戦後に認め合うようになる。フェザー級でプロに復帰し、バンタム級でジョーとの決着をつけるために減量に挑むが、試合後に息を引き取る。力石のモデルは山崎照朝であり、彼の顔を見て非常に気に入った高森朝雄がジョーと力石をプロボクシングの試合で戦わせたいと主張し、階級を落として減量を行い、最終的に力石が死ぬストーリー展開になった。ちばてつやは力石をジョーよりも大柄に描いていたが、高森朝雄が力石の顔を気に入ったため、ジョーと力石を同じ体重にする必要があり、13kg以上の減量を行い、最終的に力石が死ぬストーリー展開になった。力石はジョーのライバルでありながら読者ファンの間で人気が高く、講談社主催で、実際に力石の葬式が行われた。

ウルフ金串(ウルフ かなぐし)
バンタム級の大型若手ボクサーである彼は、全日本新人王決定戦でジョーと対戦し、引き分けた後、ジョーに敗北した。その後、引退し、ヤクザの用心棒となるが、ゴロマキ権藤に痛めつけられているところを丈に助けられた。アニメ版では、30万円を寸借詐欺していたが、返済したことが明かされた。彼には恋人や弟もいる。

タイガー尾崎
日本のボクシングのチャンピオンであるジョーは、他のジムの会長たちから「抹殺」のターゲットに選ばれ、偵察員に倒されてしまう。彼らは彼を完全に排除するため、彼の対戦相手のアドバイスをしたりもした。その後、ジョーはカーロスとの試合で1ラウンドでKOされ、失禁してしまった。

カーロス・リベラ
カーロスはベネズエラ出身の天才的なボクサーで、陽気な性格の伊達男。世界ランクは6位だが、実力は上位ランカーを恐れさせるほどで、肘打ちをパンチに織り交ぜる高等技術も持っている。葉子が来日してジョーのイップスを治すため、カーロスは南郷や原島に勝利するが、真の実力を見せていなかった。ジョーとのスパーリングでクロスカウンターを受け、本気になり、後日、タイガー尾崎に勝利する。エキシビションマッチで試合を行い、お互いにルールを無視して反則だらけの試合になる。後にホセとの試合でコークスクリューパンチを受け、重度のパンチドランカーになり、マネージャーに見放されて行方不明になるが、ジョーのハリマオ戦で再会し、白木ジムが引き取った。

金 竜飛(きん りゅうひ)
韓国出身のボクサーで、氷のチャンピオンと呼ばれる。幼少期に戦争の悲惨な経験をし、血を見るのが苦手になった。減量苦がなく、相手をダウンさせる作戦が得意技。漫画版では27歳だが、アニメ版では36歳の高齢ボクサーとして描かれている。劇場版では試合や彼の生い立ちがカットされている。

ホセ・メンドーサ
ホセ・メンドーサはメキシコ出身のボクサーで、正確な技術と冷静沈着な頭脳を持ち、「キング・オブ・キングス」と呼ばれるバンタム級チャンピオンです。彼は紳士的で妻子に愛情深く、ジョーとはライバル関係にあります。彼はWBA同級王者カロルド・ゴメスを倒してバンタム級の統一王者となり、コークスクリューパンチでカーロス・リベラをパンチドランカーにしたほどのパンチ力を持っています。ジョーとの試合では序盤に優勢でしたが、ジョーのダメージで追い詰められ、反則行為に走ってしまいました。試合終了後、彼はジョーの執念に恐怖を感じ、白髪になりました。アニメではハワイでクレー射撃や乗馬をしていました。

テレビアニメ版

1970年4月1日 – 1971年9月29日、毎週水曜19時 – 19時30分、フジテレビ系放映(全79話)。

「あしたのジョー」は、1970年4月に放送が開始され、監督格となった出崎統の演出により名を高めたアニメです。しかし、原作が病気で休載したため、ストーリーが原作に追いついてしまい、矢吹丈VSカーロス・リベラ戦で終了しています。また、オリジナルキャラクターやストーリーが随所に挿入されています。原作最後の対戦者である「ホセ・メンドーサ」は第77話で名前が登場します。

あしたのジョー2

1980年10月13日〜1981年8月31日、毎週月曜日19時〜19時30分、日本テレビ系放映(全47話)。日本テレビ系アニメとして初めて全話ステレオ放送された作品である。

「あしたのジョー2」は、前作の再編集劇場版の続きという位置づけであり、ストーリーは力石との対戦後から始まります。カーロス戦までは、事実上のリメイクになっていますが、原作にあった矢吹丈がドサ回りのボクサーになり、そこから這い上がるストーリーは省略されています。また、オリジナルストーリーがふんだんに盛り込まれ、オリジナルキャラクターも多数登場しています。

矛盾点もクリアされており、登場人物の心理表現も丁寧に描かれています。終盤のテレビ関東による世界バンタム級1位のレオン・スマイリーとのマッチメイクや、WBA王者カロルド・ゴメスとWBC王者ホセによる王座統一戦のくだりなどは、よりリアルにプロボクシングの世界を描くための追加で、オリジナルの部分からは主に監督である出﨑統が「「あしたのジョー」という作品世界をどのように解釈しているか」がうかがえます。

最後のエンディングアニメーションでは、ジョーが旅立つような止め絵に差し替えられました。これらを踏まえ、ジョーの死を匂わせる演出と同時に、エンディングは「『過去の回想』か『放浪している』のかが不分明」「旅立っていったのかもしれない」といった解釈を可能にする描写となっています。

映画版

東宝系で2011年2月11日から公開された実写映画である。昭和40年代を舞台に、少年院での丈と力石の出会いから宿命の対決までが描かれている。アイドルグループ『NEWS』の山下智久が主演を務め、役作りのために約10キロの減量やトレーニングに励んだ。力石役の伊勢谷友介も同様に減量を行い、過酷な撮影に臨んだ。映画公開に先立ち、各地域を代表するアスリートが応援団支部長に就任し、特別番組やイベントに登場した。全国277スクリーンで公開され、初日から3日間で興収3億232万1,700円、動員24万3,955人を記録し、映画観客動員ランキングで初登場第3位となった。映画は各国で配給され、DVDやBlu-rayも販売された。また、2014年12月28日にはTBS系列で放送された。

出演者

矢吹丈 – 山下智久
力石徹 – 伊勢谷友介
白木葉子 – 香里奈
丹下段平 – 香川照之
西 寛一(マンモス西) – 勝矢
ウルフ金串 – 虎牙光揮
サチ – 畠山彩奈
食堂の親父 – モロ師岡
食堂の女将 – 西田尚美
安藤洋司 – 杉本哲太
花村マリ – 倍賞美津子
白木幹之介 – 津川雅彦

主題歌

宇多田ヒカル
Show Me Love (Not A Dream)