
こんにちは。今回は、『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中のうめざわしゅん先生の最新作『ダーウィン事変』を紹介します。この漫画は、人間とチンパンジーの間から生まれた「ヒューマンジー」の少年チャーリーが主人公のサスペンスアクションです。チャーリーは、人間の両親に育てられながらも、自分の存在意義や生存権を問われることになります。そんな彼を巡って、動物解放を求めるテロ組織や政府機関、メディアなどが暗躍し、世界は大混乱に陥っていきます。
この漫画は、マンガ大賞2022で大賞を受賞したほか、『このマンガがすごい!2022』(宝島社)や『フリースタイル』(フリースタイル)Vol.50などのランキングでも高い評価を得ています。また、海外でも注目されており、Kodansha USA(英語版)から2023年秋に英語版が刊行される予定です。
では、この漫画の魅力や内容について、詳しく見ていきましょう。
- ダーウィン事変とは?
- ダーウィン事変の登場人物
- ダーウィン事変の魅力
ダーウィン事変とは?
まずは、この漫画のタイトルである「ダーウィン事変」とは何なのかを説明します。ダーウィンというと、進化論の父として有名なイギリスの博物学者チャールズ・ダーウィンを思い浮かべる方も多いでしょう。実は、この漫画の主人公チャーリーのフルネームは、「チャールズ・ダーウィン・ヒューマンジー」です。彼は、人間とチンパンジーのハイブリッドとして生まれた唯一の存在であり、その誕生自体が進化論に挑戦するかのような奇跡です。
しかし、チャーリーはその奇跡的な存在ゆえに、様々な困難に直面します。彼は人間社会に溶け込もうと努力しますが、自分と同じように動物から進化した人間たちからも差別や偏見を受けます。一方で、動物解放同盟(ALA)というテロ組織からは、「動物たちの救世主」として仲間に引き入れられようとします。ALAは、人間による動物への虐待や利用に反対し、動物たちにも人間と同等の権利を与えることを目指しています。彼らは、チャーリーが人間と動物の架け橋になると考え、彼に協力を求めますが、その手段は暴力的で過激です。
このように、チャーリーは自分の居場所を見つけるために、人間と動物の間で揺れ動きます。そして、彼の存在が世界に与える影響は、やがて「ダーウィン事変」と呼ばれる大規模な事件に発展していきます。
ダーウィン事変の登場人物
次に、この漫画の登場人物について紹介します。
チャールズ・ダーウィン・ヒューマンジー(チャーリー)
本作の主人公。人間とチンパンジーのハイブリッドである「ヒューマンジー」の少年。15歳。人間の両親に育てられ、高校に通っている。優れた頭脳と身体能力を持つが、自分の存在意義や生存権を問われることになる。
ルーシー・ハート
チャーリーの同級生で親友。頭脳明晰だがコミュニケーションが苦手な少女。チャーリーを「陰キャ」と呼ぶが、彼のことを理解しようとする。科学や生物学に興味があり、チャーリーの研究を手伝う。
ジョージ・ヒューマンジー
チャーリーの父親。元は生物学者だったが、チャーリーを引き取ってからは教師に転職した。チャーリーを自分の息子として愛し、守ろうとする。
マリア・ヒューマンジー
チャーリーの母親。元は看護師だったが、チャーリーを引き取ってからは専業主婦になった。チャーリーを自分の息子として愛し、守ろうとする。
ジェイク・アルバート
チャーリーの同級生でライバル。学校の人気者でスポーツ万能な少年。チャーリーを「猿」と呼んで嫌っているが、彼に対する劣等感も持っている。
アリス・アルバート
ジェイクの妹でルーシーの友達。明るく優しい少女。チャーリーに好意を持っているが、兄に反対されている。
サム・ウィルソン
動物解放同盟(ALA)のリーダー。元は動物園の飼育員だったが、動物への虐待や利用に反対し、テロ活動を始めた。チャーリーを「動物たちの救世主」として仲間に引き入れようとする。
レオ
ALAのメンバーでサムの部下。元はサーカスで働いていたが、動物への虐待に耐えかねてALAに加わった。ライオンと心を通わせることができる。
エマ
ALAのメンバーでサムの部下。元は獣医だったが、動物への虐待や利用に反対し、ALAに加わった。動物の治療や手術に長けている。
マイク・ハミルトン
CIAのエージェント。チャーリーの存在に興味を持ち、彼を監視する。チャーリーを「国家の脅威」と見なし、彼を抹殺しようとする。
ローラ・ハミルトン
マイクの妻でジャーナリスト。チャーリーの存在に興味を持ち、彼にインタビューする。チャーリーを「人間の一員」と見なし、彼を擁護しようとする。
マシュー・スミス
チャーリーの担任教師。チャーリーに対して公平で優しい態度をとるが、彼の秘密を知ってからは苦悩する。
ダーウィン事変の魅力
この漫画の魅力は、何といってもチャーリーというキャラクターにあります。彼は人間と動物の間で揺れ動く存在でありながら、自分の居場所を見つけようと努力します。彼は人間として生きることを選びますが、それは決して楽な道ではありません。
彼は人間たちから差別や偏見を受けますが、それでも人間たちと友情や愛情を育んでいきます。彼は動物たちから仲間として求められますが、それは暴力的で過激な手段によるものです。彼は動物たちにも同情や共感を示しますが、それは自分自身への否定にもつながります。
チャーリーは、自分が何者なのか、どこに帰属するのか、どう生きるべきなのか、という根源的な問いに直面します。そして、その問いに答えるために、自分の意志や感情を表現しようとします。しかし、彼は言葉ではなくジェスチャーや表情でコミュニケーションをとることが多く、そのことが人間たちとの隔たりや誤解を生むこともあります。また、彼は自分の感情を抑え込むことが多く、そのことが内面的な苦しみや葛藤を生むこともあります。
この漫画では、チャーリーの表情や目線が非常に重要です。作者のうめざわ先生は、チャーリーの感情や思考を読者に伝えるために、目の描き方を工夫しています。チャーリーの目は、時に悲しみや怒りや恐怖や喜びや愛情などを表現し、時に問いかけや訴えや拒絶などを伝えます。読者はチャーリーの目から彼の心情を読み取りながら、彼と一緒に物語を体験していきます。
また、この漫画では、チャーリー以外の登場人物たちも魅力的です。彼らはそれぞれに自分の信念や目的や感情を持っており、チャーリーに対して様々な態度や行動をとります。彼らはチャーリーを通して、人間と動物の関係や生存権や進化論などのテーマについて議論します。この漫画では、それらのテーマに対して一方的な答えや正解は示されません。
読者は登場人物たちの言動や思想に共感したり反発したりしながら、自分自身の考えを深めていくことができます。
ダーウィン事変のまとめ
『ダーウィン事変』の漫画レビューです。この漫画は、人間と動物の間で揺れ動く少年チャーリーの物語です。チャーリーは自分の存在意義や生存権を問われることになり、人間と動物の関係や進化論などのテーマに直面します。
この漫画は、チャーリーの表情や目線が非常に重要であり、読者は彼の感情や思考を読み取りながら、彼と一緒に物語を体験していきます。
この漫画では、チャーリー以外の登場人物たちも魅力的であり、彼らはそれぞれに自分の信念や目的や感情を持っており、チャーリーに対して様々な態度や行動をとります。
この漫画では、それらのテーマに対して一方的な答えや正解は示されません。読者は登場人物たちの言動や思想に共感したり反発したりしながら、自分自身の考えを深めていくことができます。
『ダーウィン事変』は、現在『月刊アフタヌーン』で連載中であり、単行本も既刊5巻まで発売されています。この漫画は、読むのにパワーが要る漫画ですが、それだけに読んだ後の感動や衝撃も大きい漫画です。人間と動物の関係や生存権や進化論などに興味がある方はもちろん、チャーリーというキャラクターに惹かれる方も多いと思います。ぜひ一度読んでみてくださいね。